積みに至る経緯
積み≒罪と称される模型の国。
それなりの模型歴を重ねている人であれば積みプラが皆無という人は少なかろう。
齢を重ねていくと、果たして現在積んであるものを消化できるのだろうか…
という危惧も生まれてくるのだが、
一言で"積み"と言ってもその形成過程は人によって異なる。
カワグチ的には大別すると3つの類型に分かれるのではないかと思う。
ひとつは、作る気満々ながら手が追い付かず山が出来てしまうケース。
自分などは完全にコレなのだが、
ある程度の模型歴のある人なら
キットを前にして完成に至る工程はある程度想像出来てしまう。
箱を開けてから完成するまでには楽しい作業ばかりではなく、
自分が苦手とする作業、手間ひまばかりかかりストレスが溜まる作業といったものも
慣れている人ほど容易に想像できてしまう。
例えば戦車模型で履帯を1ピースづつ繋いでいく…
例えば航空機模型で凸モールドを全て彫り直す…
例えば艦船模型で複雑な形状の船体にエッチングの手すりを張り込んでいく…
例えばガンプラで片腕、片脚を仕上げた後、同じ作業をもう一度繰り返す…
人によってストレスを感じるシーンは異なるだろうが
ドラクエ序盤のひたすらスライムを叩いて僅かな経験値とゴールドを貯めていくような
必ず通らなければならない試練というのはやはり気力が削がれる。
それがわかっているから手を付けられなかったり
試練の前で手が止まっていたりする。
また、知識・情報・道具・環境が整っていても
まとまった時間が取れないから作れないという方もいらっしゃる
一気に仕上げたいという欲求はわかるが、
ガチで仕上げようと思えばそれなりに時間は要する。
スキル維持の観点からも1~2時間ほどでも構わないので
模型を手にする時間を捻出してもらえればやがては完成には至るのだが、
そこにもやがて訪れる試練を思うと手が動かなくなってしまう。
作る気満々だったはずのものが珊瑚礁を形成する要素になってしまう…
という例は昔からある。
次にありがちなのが、コレクションとして模型を買い集めるケース。
絶版品やレアキットなどはコレクター垂涎の的ということになるのだが
輸入品などで今買っとかないと次にいつ入荷するかわからない…
という危機感から買い求めてしまうのもこの類型だろう。
コレクションが主眼だから基本的には作る気が無い。
ひたすら積まれ、消化されることは無い、というのが難しいところで
収納スペースにも限りがあるだろうし、人間には寿命もある。
どこかのタイミングですっぱりやめてしまうか墓場まで持っていくかの二択になる訳だが、
高価だったり貴重なものは手放すのが躊躇われるだろうから概ね後者となる。
秋月型12隻を作りたいから…ということでピットの秋月型を12隻ぶん買い、
アオシマから新型が出たから12隻ぶん買い、
フジミの2隻入りキット6箱が積まれた段階で
先の24隻ぶんは最早作られることのない積みとなる。
もしかしたらパーツ取りに使うかもしれないから…ということで
これも珊瑚礁の一角を形成することになる。
この場合はケース1と2の中間くらいに位置すると言えるだろうか。
そして最後のケースがガンプラを買われている人に見られるのだが
新製品だからとにかく買っちゃったけど、
次のが出るので作っている暇が無くて積みに回るというもの。
総体的にはこのケースの人が多いのではないかと思う。
ガンプラというブランドに対しての購買行動の場合、
個々のMSへの思い入れはそれほどでもない、という方も少なくない。
個人的には思い入れの度合いは製作意欲に直結すると思っているので
すぐに従来品と化してしまう自室の積みはやはり顧みられることが無くなってしまう。
以下はあくまでも個人的な仮説。、
実際の販売に於ける流通のシェアでも明白なのだが
購買シーンにおけるネット通販の存在は年々高まってきている。
新製品の情報に関しては3カ月前くらいから模型誌で扱われ始め
ネットを媒介として情報は拡散する。
新製品に関する情報をあらゆるところにアクセスして収集する。
SNSなどでも来たるべき新製品の話題が飛び交う。いわゆる"祭り"の状態。
この"祭り"のタイミングがおそらく購買欲求が最も高まっている状態ではなかろうか。
間もなく通販サイトで予約受付が始まる。
祭りの熱気そのままにポチる。
購入したというアクションとは別に、
ネット上では既に次の新製品の話題で別の祭りが始まっている。
情報収集~祭り~購入という1サイクルに要する期間は
新製品のリリーススピードに比例して早くなる。
やがて発売日となり商品が手元に届くころには
既に気持ちは別の祭りの方に行っていたりする。
商品を手にした後、レビューをすることで祭りが再燃されることはあるが、
誰かのレビューを見ることで疑似プラモ体験が出来た多くの人は
自分で作ることなくキットは積みに向かう。
商品発売前に購買欲求がピークに達し、
ポチった時に自分の中の祭り=エンターテインメントが終了。
そういう人にとってはポチるまでが楽しいのであって、
商品そのものは余禄ということになってるのではないか。
その時の積みはその人にとって残念な山になってるんではなかろうか…
などと思ったりする訳です。
GBFのような過去作品のMSに陽の目を当てる、というようなよっぽどのことでもない限り
残念な山から従来品がサルベージされる機会は無いのかもしれない。
一言で積みと言ってもその山が出来るプロセスはみな同じではないだろう。
永遠に積みを維持し続けることは出来ないのだから、
好むと好まざるとに関わらず
どこかのタイミングで積みと向き合わなければならない時は必ずやって来る。
積みの山をその人の嗜好を具現化した姿と見るならば、
完成させた作品の数々はその人の成し遂げたモノの履歴と言えるかもしれない。
いずれ消さねばならない山を前にすると
出来るならば履歴を重ねる方向で解消したいものだ。
積みの山は業の山でもある。
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Comments
たまにFBでコメさせていただいてますが、こちらのほうはずいぶん久しぶりにコメさせていただきます(^-^;
自分にあてはまるのが、1番目と3番目の理由ですね。
特に、模型歴が長くなれば1番目の比重は重くなるのではないでしょうか?
自分によくあるのですが、9割完成(後はデカールか)くらいまでいって、組み立ててる時に小さなヒケが気になり、またやすり・塗装をするのですが、その際にまたまた気になるところを見つけていくというう、まさに負のスパイラルに陥ってしますことです。また、常に自分のできる限界のことをやろうとしてしまいがちで(スキル上達のためですが)、作る楽しみを忘れてしまいがちになりますね(;´д`)トホホ…
これが、3番の理由が絡んできてしまい、気づけば積んでいるという状態になるように思います( ̄○ ̄;)!
でも、積みをなくすために作るという行為をしてしまうのだけは、これからも気を付けていきたいですね。やはり、純粋に作る行為を楽しみたいです。忘れがちですけどね(苦笑)
少し話が変わりますが、4月の消費税増税前に大型キットを買い込むという話をよく聞きます。これも積みの原因になるんですかね(笑)
あまりまとまらず、すみませんでしたm(_ _)m
Posted by: 将生 | March 05, 2014 11:09 PM
久しぶりなうえ、
遅ればせながら今年もよろしくお願いします。
私も積みプラ率が高くなっています。
主にコレクションとして買ってる事が多いです。
仕事の関係上、
かれこれ一年はプラモライフしていないですし、
昨年後半あたりから、
プラモ購入自体が減りつつあります。
でも、手放す気はありません。
元は作ってみたいという意気込みで購入していますから。^^
Posted by: 菊池 勝 | March 07, 2014 06:51 PM
■ 将生さま
メーカーの中の人的には積んでもいいからお買い上げくだされ…
というべきところなのでしょうが、
本文にも記した通り、限界に達したところでリタイアする人が増えれば
結果的に模型の国は収縮することになる訳で、それは望むカタチではないな…と思う訳です。
単純に類型化しましたがもちろん様々な理由が絡まりながらの積みの山ですから
そう簡単に割り切れるものでもないとは思ってます。
箱の状態で置いておくのと組んだ状態でしまっておくのでは現実的な空間の占拠率も大きく変わりますし
全てをガチで作りたいのでなければ手慰みに組んでしまうものがあってもいいんじゃないかと思う訳です。
積みがなくなると不安になるという心理もあるかもしれません。
とにかく工作が好き、というのであれば普段はあえて塗装に至らなくてもそこで終了としてしまってもいいのかもしれません。
ご自身が楽しめることが何よりも優先されるべきですから。
■菊池さま
作りたいという気持ちがあって買われているものと
何となく買っとかなきゃいけないような気がする…ということで買われたキットでは
気持ちの入り方が大きく異なると思います。
作りたい気分もアッパーな時と底な時は訪れるでしょうからアッパーな時に手を付けるでいいと思います。
作りたいな…という気分を多寡は問わずで持ち続けていただけるとありがたいですね。
Posted by: 川口 克己 | March 13, 2014 06:22 PM