« January 2014 | Main | April 2014 »

March 20, 2014

初めましてな方にお薦めすべきもの

初めてガンプラを作る人にどのキットをお薦めすればよいのか…。
35年ほどの間にガンプラの種類は増殖を続け
ほとんどのガンプラが頻度は別として生産可能な状態に保たれている。
品揃えの良いお店でガンプラ棚の前に立つと
確かに模型の国新入生諸氏は何を買って良いのか判断に迷うことだろう。

カワグチ的には好きなMS、キャラクターがあるのであれば、
それにまつわるキットを手にしていただくのがベストとお答えしている。

世間的には安価でパーツの少ないキットをお薦めするべきという空気がある。
パーツを組み立てて完成させるプラモデルという商材の性質上
慣れない方にとってパーツが少なければ
確かに必要以上の労力を要することもなく完成には至る。
初めてガンプラを手にする人にとって高価なキットは手控えてしまうだろうし
ちゃんと完成しないかもしれないという危惧があれば
確かに安価なキットの方が手軽に感じられるかもしれない。

だが、完成した時の満足度という点ではどうだろうか。

とにかくひとつガンプラを作ってみて飾っておきたいという指向であれば
組み上がりのサイズ的には1/144<1/100<1/60<1/48という具合に
満足度は並べられるのではなかろうか。

変形するものは変形する、合体するものは合体するといった
MS固有のバリューは再現されていて当たり前だと思われるだろう。

組み上がったものと自分が知っているMS像、或いは箱絵と比較して
デザインが異なる、配色が異なる(省略されている)ものはガッカリさんだと思う。
シールで再現された配色よりも部品段階で色分けされていて欲しい…等々、
初めて作る人の満足度のハードルは実はかなり高い。

安かろう悪かろうは初めて作る人にとっては
ガンプラに対し期待外れなものになってしまうのではなかろうか。
そうなるとその人は2つ目のキットを手にすることなく
模型の国を去ってしまうかもしれない。

ガンプラの場合、説明書に従いパーツをランナーから切り出し、
ゲート跡を成形して組み立てるという作業単位を繰り返していくことで
ほとんどの方は完成品を手にすることが出来るような仕様になっている。
それはHGでもMGでもPGでも基本的には変わらない。
完成に至るプロセスに関してはパーツ数と繰り返す作業数は比例する。
そこには特殊な加工やテクニカルな組み立てといったものは基本的には無い。
初めての人にPGをお薦めするのはさすがにどうかとは思うが、
ある程度のパーツ・工程数はそのキットに対する思い入れが強ければ
モチベーションを維持することはある程度までは可能だと思う。

逆に何となく買ってみた…的な気分でガンプラを手にされた方は
HGあたりでも作っている途中で辟易とされるかもしれない。


プラモ製作ツールにしても
安かろう悪かろうはお薦めするべきではないと思っている。
キットよりも高いツールに躊躇する人は多いと思うし
初めましてな人は自分に使いこなせるだろうか…と不安になるかもしれない。
特殊な工具は確かに使うのにそれなりの技量を必要とするかもしれないが
ニッパーやヤスリといったベーシックツールに関しては
お財布事情が許すのであれば多少値が張っても良いものをお薦めしたい。

ニッパーなどは顕著なのだが、ゲートカット~跡処理を行う場合
切れ味の良いニッパーを使うとゲート跡の処理を楽に済ますことが出来る。
お安いニッパーの場合、ニッパーでカットしてカッターで整えヤスリで仕上げる。
切れ味の良いニッパーであれば
カッターでゲート跡を整える作業を省くことも可能だったりする。

ガンプラの場合1パーツあたり、だいたい3箇所のゲートがある。
HGクラスで平均100パーツくらいある訳で×3、
素組みで丁寧に仕上げようと思ったら
300のゲートカット、跡処理を行う必要がある。
MGで300弱のパーツ数なので900の処理を要す。
ゲート跡の処理を楽に済ますことが出来れば
完成までの時間、労力を劇的に減らすことが出来てストレスも軽減される。

箱を開けて成形品の束に尻込みする人は
実際に作業を始めてゲート処理をする段階で嫌になるかもしれない。

先行投資で多少お高いツールを揃えたとしても
継続的に作る意思のある人であればきっと償却できるはず。

お試しで買って作ってみた…という方には無理にお薦めしないが
模型趣味…いいかも、と思っていただける方には
ツールも良いものを揃えていただきたいとかなりマジに思っている。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

March 05, 2014

積みに至る経緯

積み≒罪と称される模型の国。
それなりの模型歴を重ねている人であれば積みプラが皆無という人は少なかろう。
齢を重ねていくと、果たして現在積んであるものを消化できるのだろうか…
という危惧も生まれてくるのだが、
一言で"積み"と言ってもその形成過程は人によって異なる。

カワグチ的には大別すると3つの類型に分かれるのではないかと思う。


ひとつは、作る気満々ながら手が追い付かず山が出来てしまうケース。
自分などは完全にコレなのだが、
ある程度の模型歴のある人なら
キットを前にして完成に至る工程はある程度想像出来てしまう。
箱を開けてから完成するまでには楽しい作業ばかりではなく、
自分が苦手とする作業、手間ひまばかりかかりストレスが溜まる作業といったものも
慣れている人ほど容易に想像できてしまう。

例えば戦車模型で履帯を1ピースづつ繋いでいく…
例えば航空機模型で凸モールドを全て彫り直す…
例えば艦船模型で複雑な形状の船体にエッチングの手すりを張り込んでいく…
例えばガンプラで片腕、片脚を仕上げた後、同じ作業をもう一度繰り返す…

人によってストレスを感じるシーンは異なるだろうが
ドラクエ序盤のひたすらスライムを叩いて僅かな経験値とゴールドを貯めていくような
必ず通らなければならない試練というのはやはり気力が削がれる。
それがわかっているから手を付けられなかったり
試練の前で手が止まっていたりする。

また、知識・情報・道具・環境が整っていても
まとまった時間が取れないから作れないという方もいらっしゃる
一気に仕上げたいという欲求はわかるが、
ガチで仕上げようと思えばそれなりに時間は要する。
スキル維持の観点からも1~2時間ほどでも構わないので
模型を手にする時間を捻出してもらえればやがては完成には至るのだが、
そこにもやがて訪れる試練を思うと手が動かなくなってしまう。
作る気満々だったはずのものが珊瑚礁を形成する要素になってしまう…
という例は昔からある。


次にありがちなのが、コレクションとして模型を買い集めるケース。
絶版品やレアキットなどはコレクター垂涎の的ということになるのだが
輸入品などで今買っとかないと次にいつ入荷するかわからない…
という危機感から買い求めてしまうのもこの類型だろう。
コレクションが主眼だから基本的には作る気が無い。
ひたすら積まれ、消化されることは無い、というのが難しいところで
収納スペースにも限りがあるだろうし、人間には寿命もある。

どこかのタイミングですっぱりやめてしまうか墓場まで持っていくかの二択になる訳だが、
高価だったり貴重なものは手放すのが躊躇われるだろうから概ね後者となる。

秋月型12隻を作りたいから…ということでピットの秋月型を12隻ぶん買い、
アオシマから新型が出たから12隻ぶん買い、
フジミの2隻入りキット6箱が積まれた段階で
先の24隻ぶんは最早作られることのない積みとなる。
もしかしたらパーツ取りに使うかもしれないから…ということで
これも珊瑚礁の一角を形成することになる。
この場合はケース1と2の中間くらいに位置すると言えるだろうか。


そして最後のケースがガンプラを買われている人に見られるのだが
新製品だからとにかく買っちゃったけど、
次のが出るので作っている暇が無くて積みに回るというもの。
総体的にはこのケースの人が多いのではないかと思う。

ガンプラというブランドに対しての購買行動の場合、
個々のMSへの思い入れはそれほどでもない、という方も少なくない。
個人的には思い入れの度合いは製作意欲に直結すると思っているので
すぐに従来品と化してしまう自室の積みはやはり顧みられることが無くなってしまう。

以下はあくまでも個人的な仮説。、

実際の販売に於ける流通のシェアでも明白なのだが
購買シーンにおけるネット通販の存在は年々高まってきている。

新製品の情報に関しては3カ月前くらいから模型誌で扱われ始め
ネットを媒介として情報は拡散する。
新製品に関する情報をあらゆるところにアクセスして収集する。
SNSなどでも来たるべき新製品の話題が飛び交う。いわゆる"祭り"の状態。
この"祭り"のタイミングがおそらく購買欲求が最も高まっている状態ではなかろうか。
間もなく通販サイトで予約受付が始まる。
祭りの熱気そのままにポチる。
購入したというアクションとは別に、
ネット上では既に次の新製品の話題で別の祭りが始まっている。

情報収集~祭り~購入という1サイクルに要する期間は
新製品のリリーススピードに比例して早くなる。
やがて発売日となり商品が手元に届くころには
既に気持ちは別の祭りの方に行っていたりする。
商品を手にした後、レビューをすることで祭りが再燃されることはあるが、
誰かのレビューを見ることで疑似プラモ体験が出来た多くの人は
自分で作ることなくキットは積みに向かう。

商品発売前に購買欲求がピークに達し、
ポチった時に自分の中の祭り=エンターテインメントが終了。
そういう人にとってはポチるまでが楽しいのであって、
商品そのものは余禄ということになってるのではないか。
その時の積みはその人にとって残念な山になってるんではなかろうか…
などと思ったりする訳です。

GBFのような過去作品のMSに陽の目を当てる、というようなよっぽどのことでもない限り
残念な山から従来品がサルベージされる機会は無いのかもしれない。


一言で積みと言ってもその山が出来るプロセスはみな同じではないだろう。
永遠に積みを維持し続けることは出来ないのだから、
好むと好まざるとに関わらず
どこかのタイミングで積みと向き合わなければならない時は必ずやって来る。

積みの山をその人の嗜好を具現化した姿と見るならば、
完成させた作品の数々はその人の成し遂げたモノの履歴と言えるかもしれない。

いずれ消さねばならない山を前にすると
出来るならば履歴を重ねる方向で解消したいものだ。
積みの山は業の山でもある。

| | Comments (3) | TrackBack (0)

« January 2014 | Main | April 2014 »