観劇

2019年4月 5日 (金)

「母の法廷」

個人的に医療ドラマ、法廷ドラマというのは好きで
TVで放映されているとついチャンネルを合わせてしまう。

圧倒的に不利な状況から諦めることなく、
支援も望めない中で集中力と柔軟な発想を武器に窮地に一穴を穿ち、
そこから形勢を挽回し大団円を迎えるという様は或る種のカタルシスを感じる。

今回観劇した「母の法廷」。
簡素化したような法廷のセットを舞台に4人の女優さんが、とある裁判の様子を演じる。
被告人の母、裁判員、検察官、弁護士。
それぞれの役割と目線で劇は進行していく。

冒頭手続きから証拠調べ手続き、論告、弁論、結審という
刑事裁判の流れに従い芝居は淡々と進行していく。

それぞれの役割を演じる役者さんに感情移入する余地はなく
「刑事裁判の流れ」とでもいうようなマニュアルビデオでも見ているような展開に
傍聴人の一人になったような気分で裁判の進展を見ているような不思議な感覚は
演劇を見ている感覚とは異なる次元から眺めているようにも思える。

それでも演じる役、役者さんの個性から
被告人を溺愛する老齢域に入ろうとする母、
職務に忠実たらんとするベテラン検察官、
アクシデントに感情を翻弄される若い弁護士、
好奇心の塊のような一般市民を体現するかのような裁判員、
そんな4人の心情が少しづつ感じられるようになる。

言われないと、知ろうとしないと感じ得ない他人の気持ち、振る舞い、
裁判というシステムを通じて事象を告げられることで
自分の価値観だけでは読み取ることは出来ないこともあり
他人の価値観を理解することで初めて感じ得るものがある、
そんなことを改めて認識させられたようにも思う。

事件を起こしてしまうのも人、
事象を解明していくのも人、
判断を総合して裁くのも人。

芝居の主旨とは離れてしまうが
SNSを通じた他人との関わり方に時々違和感を感じることもある自分には
簡単で便利なツールを使うからこそ、
そのツールを使う"人"のことを意識し理解しようとする、
他人との適切な距離感を保ちながら良好なコミュニケーションを取るというのは
そういうことなんじゃないか…。

家路に着きながらそんなことを考えさせてくれた芝居ではあった。

母の法廷

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2019年3月 8日 (金)

「こと~築地寿司物語~完全版」

"運命を受け入れる"というのと"運命に流される"というのは
似て非なるものだと思う。

抗いようがない運命というのもあれば、
自らが選択した結果訪れる運命というのもある。

"運命を受け入れる"というのは正対し自分はどうするのかを考えアクションを伴う訳で
その姿勢は流されるという受け身な姿勢に対し、極めて主体的なのではなかろうか。

それが抗い得ないものでもどう向き合うか考え行動を起こせば
受け入れた後に気持ちを切り替えて歩を踏み出すことが出来る。
踏み出した後は後悔の念や未練のようなものに捕らわれず進むことが出来る。

避け得ない運命には暖かい運命もあれば極めて暴力的な運命もある。
特に後者は考え行動する力を根こそぎ奪っていく。
力を失い立ち尽くし運命を嘆くだけであれば踏み出すべき道も見い出せない。
"運命を受け入れる"ということは最大限の覚悟と責任が伴うことなのだと思う。

そんな覚悟と責任を背負い続けられるほど人間というイキモノは強くはない。
手を差し伸べてくれるのはやはり心を許した仲間なのだろう。
"絆"というのはそうした人たちとの信頼、愛情を伴う関係なのだと思うし、
これもまた受け身の姿勢ではなかなか築けるものではないと思う。

"運命を受け入れ、その後、努力する"というのは
そういう事なんじゃないかなぁ…。


などということを考えながらの2時間余。
「運命を受け入れる~」という言葉は
舞台冒頭に主人公である ことさんから発せられる。

大正時代に日本橋の寿司屋に嫁ぎ
関東大震災で日本橋市場から焼け出され
芝浦~築地への市場の移転に伴い築地で再開した玉寿司。
太平洋戦争が始まりご主人が病没され築地市場も空襲に晒される。
戦後の焼け野原からご主人亡き玉寿司を再建し
代を重ね市場は築地から豊洲へ拠を移す。

女性主人ことさんを軸に語られる築地市場の物語であるが
今回3度目の公演となる。

昨年拝見した2回目の公演では鳳恵弥さんが演じられることさんの強さと
山本圭壱さんが演じられたご主人栄蔵さんの優しさが印象に残る舞台だった。

今回お二人の好演はもちろんなのだが、築地玉寿司の中の人たちと集う人たち、
そして彼ら彼女らが息づく築地という世界がとても愛おしく感じられる舞台だった。

その中で自分的に印象に残ったのが、長台詞をものともせず
ことさんの娘さんの弥生さんの少女時代を演じ切った歌田雛芽さんの存在感と
ことさんの息子さんの幼馴染で奥さんとなる典子さんを演じられたAyanoさんの
優しい笑顔を絶やさない中に垣間見える女性の強さ。
そして今回はことさんの一代記というよりも群像劇に近い印象が
玉寿司に集う人たちを演じられた皆さんから感じられた。

巡り合わせで今の自分がある、という言葉をよく使っているのだけれど
その巡り合わせというのは人であったり出来事であったり様々だが
それも運命というものの一面なのかとも思うし
100%ポジティブとは言えないけれど、
巡り合わせに向き合って考え呑み込むようにはしてきていると思う。

今まで覚悟と責任を重く背負うほどの運命には出会ってはいないが
いざそんな局面に向き合った時に
立ち尽くし、下や後を向き続けるようにはならないようにしたいものだ。

こと~築地寿司物語~完全版
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2018年6月 9日 (土)

「くるくると死と嫉妬2018」を観て…

大ヒットシリーズ≪アンフェア≫の原作者であり、
また数々の人気ドラマの脚本も担当する秦建日子が、
臓器移植や無差別殺人など現代に蔓延る問題を取り上げ、
愛とは、正義とは何かを問いかけた話題作が装いも新たに2018年度版として公演。
平成の時代が終わりを告げようとする今、
あなたはこの物語から何を受け取りますか?

演出には神奈川を中心に様々な演劇を発信し、
演出のみならず多くのプロデュース企画も行う笹浦暢大。
総合演出として唐十郎が育てた唯一の演出家、中野敦之が控える。

出演は秦建日子と同じくつかこうへい門下の鳳恵弥が主演を務める。
また、役者としての評価も高い極楽とんぼの山本圭壱や
劇団四季のTOP女優として数々の作品でメインキャストを務めて来た秋夢乃、
宇宙刑事シャリバンなどの主役など日本を代表するアクション俳優、渡洋史などベテラン陣に加え、
映像、舞台と活躍の場を広げる北村優衣や屋久島アイドルのかずみーぬなど若手の注目株も出演する。
<以上、作品紹介より>


自分は作劇のお作法もセオリーも知らないので
散漫にはなるが感じたままにこの作品に触れてみる。

開演時間となり暗転した舞台に鳴り響く重々しい音楽。
後に様々な事件・事故に巻き込まれる、
或いは当事者となる演者さんが舞台に並びお芝居は始まる。

植物状態、脳死、臓器移植を要する重症患者たちが並ぶ病院で近親者たちは
或る者は絶望し、或る者はパニックに陥り、また或る者は冷静に受け止めようとする。
重症患者たちは理不尽な無差別殺人事件の加害者であり被害者としてそれぞれのドラマが語られる。

それと並行して余命を宣告された女性と彼女を愛する男性の話が加わってくる。

既に時系列は自分の中で混乱し、ストーリーを追いかけるよりも
エピソードの断片からそこに関わる人々が抱いているものに目を向けることに意識が変わっていた。

現実の世界でも連日様々な事件・事故が報じられる。
その報を知った者は自分の世界には起こり得ないこととして
観劇しているような立ち位置で受け止める。

事件が醜悪であればあるほど、衝撃的であればあるほど
ニュースメディアは加害者の異常性を追い
怪物性を際立たせられた加害者は平穏な生活を営んでいるものの目には
自分たちとは別種のモノのように写っていく。

だが、生まれついての怪物という存在は果たしてあるのだろうか。
誰しもが心の奥底に闇を孕んでいるはずで
それが表出した結果が異常な事件の加害者の姿なのではなかろうか
その点では誰しもが怪物に変ずる可能性を持っているように思う。

疑心は暗みに鬼の姿を見せ、更に疑心が募っていくと悪鬼を生じさせる。
悪鬼に駆られた人は心の闇に支配され、
時として誰もが想像し得ない暴挙に走らすこともある。
誰もが意図せず怪物と化す可能性を秘めているのではないかと思う。

理不尽な凶行に晒された劇中の人物は絶望から狂気に蝕まれていく。
そうした狂気は伝染するかのように社会に広がっていく。

その反面、劇中では余命を宣告され絶望を感じたであろう女性が
理不尽で抗えないモノを受け入れ前向きな意識に転化させた姿がある。
絶望を超えた彼女の姿は愛おしく、強さすら感じる。

滅私奉公的な意識を必ずしも無条件で良しとは思わないが
エゴが溢れる昨今、閉塞感に似たフラストレーションを感じることも多いが
そんな世の中を少しでも住み易く感じるためには
絶望を受け止め超えていく姿勢を保つことなのかもしれない。

人間、一番大切なものは自分であり
大切に思い愛し守りたい範囲は自分を中心に近親者、友人・知人、他人へと
自分から距離が離れるほどに次第に希薄となっていく。
人の数だけ思いの同心円はある訳で
それが交錯する時、共感も生まれることもあれば軋轢を生じることもある。
軋轢よりも共感が生まれる割合が多ければ
きっとその社会は住み易く感じられるのではないかと思う。

劇中で「遠くの者を愛する」という言葉が用いられる。
自分なりの解釈になるが
希薄になりがちな他人への思いを意識することで作品紹介で問われた
「愛と正義」を認識し保てるのではないか。
劇中の様々な人物が辿り着いた場所はそんな境地なんじゃないか。

そんなことを感じさせてくれた2時間ではあった。

くるくると死と嫉妬

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2018年3月 6日 (火)

「こと~築地寿司物語~日本の女は強かった」

昨年上演された"こと~築地寿司物語~"の続編が上演されている。
大正期から築地で店を構える"築地玉寿司"をモデルとした舞台劇で
主人公であることさんが日本橋で奉公にあがるところから始まり
関東大震災、太平洋戦争といった歴史的事件を背景に
日本橋から築地への魚河岸の移転、築地での出店といった
ことさんの人生を左右する様々な出来事がお芝居の中で描かれる。

誰しもが思惑を抱え利を求める。
時代を問わず人の振るまいというのは概してそのようなものだが
人生を上手く回している時はなんの問題も無く時は過ぎていく。
しかし、アクシデントが生じたり思惑通りに行かなくなると脆さが表出する。

幾多の困難に直面しながらも常に前に進む歩みを留めず
日本初の女性寿司店主として自ら板場に立ち、老舗寿司店の礎を築いたことさんは
思惑や利得と無縁なピュアな人生を送られた。
だからこその強さ、優しさを惜しみなく周りにもたらすことが出来たのだろう。
それ故に、ことさんは築地の女神と呼ばれ周囲から頼られ親しまれたという。

そんなことさんを演じるのは鳳恵弥さん。
昨年の舞台から引き続きことさんを演じられる。
それ故かことさんを演じる恵弥さんは時代の進むにつれ激変していく環境の中でも
おりおりのことさんを演じ切られているように思える。

後に玉寿司の初代店主となる栄蔵さんはダブルキャストだったが
自分が観た舞台では山本圭壱さんが演じられた。
寿司屋の大将然とした雰囲気がとても感じられる好演だった。
お芝居の途中で日替わりゲストをお客さんとして迎える時間が設けられているが
フリートークに近いアドリブでの会話の折には
それまでの栄蔵さんとは違った目の輝きが感じられ
ゲスト(この日は木根尚登さん)を立てながらも弄り倒す
短い時間ながら芸人さんの真骨頂を垣間見せてくれた気がする。

他にも築地の顔役でもある医師に渡辺裕之さん
勝気な芸妓さんに市川美織さん
活弁士に若井おさむさん
といった多くの方もご存知の方々が出演されている。

公演も前半を消化し明日3/6の休演日を挟み3/11に樂日を迎える。

仕事や勉強といったルーチンに浸かっている人は
時々非日常に触れることでリフレッシュも出来る。
積極的にそんな時間を自分に設定するのは悪くない。
その時間を笑えて泣けるエンターテインメントに振ってみては如何だろう。

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2017年12月23日 (土)

2017年最後の観劇

【ドロセラ~DROSERA~】
12/22のソワレを拝見してきました。
ドラマを見ているような濃密な90分のサスペンス。

案内によると概要は、

 舞台【サイレントメビウス】など数々の話題作を扱う細川博司が脚本&演出、
 先日Blu-rayBOX第1弾が発売されたばかりの
 【宇宙刑事シャリバン】こと渡洋史がアクション演出を担当します。
 若き役者たちに、熱い魂が注入される渾身の舞台。
 ご期待下さい!

《あらすじ》
 主人公、真島が公安から追跡を依頼されたのは
 テロリストのカリスマとして30年以上逃亡を続けている男。
 周囲の人間たちの陰謀と彼を信奉する者たちが仕掛ける罠に挑んでいく
 アクションサスペンス。

簡素な空間に椅子、テーブルといった最小限の美術。
演者さんたちの台詞と所作が全てを表現するという攻めた舞台。
文字通り指呼の間とも言える距離感で繰り広げられる舞台は
演者さんたちの息遣いすらも伝わってくるような錯覚を覚える。

時間や場所の転換もその中で行われる訳だが
屋内シーンでは演者さんたちが靴を脱いで登場したりと
様々な情報が盛り込まれることで観ている側もイメージし易く
戸惑うことなく観ることが出来る。

登場人物それぞれの第一印象が仮面であるとするなら
ストーリーが進むにつれそれぞれの仮面の下の顔が見えてくる。
欲を言うなら違う顔の時に
演者さんたちの声のトーンや所作、立ち居振る舞いが変わってくると
より状況の理解が促されるような気もする。

終了後に出演されていた鳳恵弥さんと少しお話した際に
ハンドガンを撃つ芝居は初めてだったけど、重さやバランスなどは
モデルガンとは言え持ってみないとわからない…と話されていた。

模型の国の自分的にはその辺の感覚は非常にわかる話で
フィギュアなりロボなりで銃を構えさせたりする時も
その辺は意識しておかないと観る人に違和感を感じさせるものになる。
特に機構的なところで雰囲気で構えさせたりすると
排莢口を手で塞いでしまったりという間抜けなことも起こり得る。

観劇した感想ですか?
特別な出来事に縁のない自分でも道化を演じながら
ファンタジーを必要としてるのかも知れないと思えたって感じかなぁ。

アクション演出の渡洋史さんは出演もされているので
言ってみればシャリバンの生アクションが楽しめるとも言える訳です。

公演は12/25まで。
12/24にはサプライズも用意されているらしいので気になる方は是非。
        ▼
http://stage.corich.jp/stage/88171

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2017年5月29日 (月)

日本の始まりの物語

劇団歴史新大陸 第十回本公演「古事記-日本の始まりの物語-」を拝見した。

古事記という一大叙事詩を舞台演劇としてどのように観せてくれるのか、
というのは非常に興味深いところだった。
本日樂日を迎えられたということで書いてしまうと
イザナギとイザナミの国つくりから三貴神の誕生までは
ナレーションにてダイジェストが語られ、アマテラスの岩戸隠れから舞台は始まる。
その後、スサノオの高天原追放、クシナダヒメとの出会い、八岐大蛇退治、
世代が進みオオナムジと因幡の白兎、スセリビメとの駆け落ち、
オオクニヌシの国造り、国譲りを巡る高天原と中つ国の対立、国譲り
そして天孫ニニギの中つ国への降臨までが演じられた。

コンパクトにまとめられた「日本の始まりの物語」は長大な話を
非常にうまくまとめた舞台だったと驚きを感じた。

エピソードだけでも数本分の作劇にに耐え得る内容を2時間余に圧縮する訳で
その点からするとスサノオが八岐大蛇を退治するまでの流れはやや駆け足に思われ
観る側もストーリーを追いかけるのに精一杯となり
各神々への感情移入を促す個性の見え方はやや希薄な印象を受けた。
高天原で乱暴狼藉を働くスサノオのエピソードは語りの中で消化されたためか
荒ぶる神としてのスサノオの存在感がやや弱く感じられたというのも正直な印象。

しかし、因幡の白兎の個性が強く立っていて
以後のオオナムジを中心に動いていくストーリーはドラマチックではある。
オオナムジとスセリビメが出雲に向け根の国を後にするくだりは実に印象的で
スセリの父神である愛すべき乱暴者スサノオの父性は愛おしく感じられる。

理想の国造りを目指すオオナムジ改めオオクニヌシだが
優し過ぎるがゆえにやや優柔不断にも思えるオオクニヌシの姿には
自分などは三國志演義の劉備の姿が重なってしまう。
劉備の蜀は劉備没後に徐々に国力は衰え、やがて滅ぶことになるのだが
出雲ではオオクニヌシが2人の息子に治世を任せていたところに
高天原から国譲りを迫られ結果的には屈することになる。

流血の事態を避けたい最高神アマテラスの懊悩は人間的で
演じる鳳恵弥さんの凛とした立ち居振る舞いと
コミカルに表現されるアマテラスのギャップがいい塩梅で
人間味溢れるアマテラスとしてキャスティングの妙が感じられた。
全体に音響が強く感じられ台詞と被ると聞き取りにくい箇所もあったが
恵弥さんの声の張りは強く、その辺りもアマテラス然としていたように思えた。


舞台を見終えて断片的に記憶していた古事記のエピソードが
神々の名前と一体となり消化できたような気がする。
観てよかった…という思いと共に、
改めて「古事記」を紐解いてみたいとも思うが、
「古事記」というとお勉強的な響きがあり腰が引けてしまう向きもあるやに思う。
しかし、語られる話や登場する神々は実に人間臭く、
ギリシャ神話と神々に見られる人間臭さとそれほど変わらないようにも思える。
思う以上に敷居は低いのではなかろうか。

天皇陛下の後継に関する話題が様々に言われる昨今、
皇室の系図を辿っていけば古事記の世界に行き着く訳で
万世一系という考え方には異論もあろうが、学術的な考証・検証とは別に
祖神である天照大御神から邇邇芸命の天孫降臨を経て
神武天皇より今に至る皇室の存在は日本人の精神形成の根底に根付くものであり
皇室の話題を耳にした時に太古の神々にまで思いを馳せる…
というのは全然アリだと思う。

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2016年10月12日 (水)

劇団唐ゼミ☆ 第26回公演 【腰巻お仙 振袖火事の巻】

1年ほど前、平素より知己を戴いている方からのご案内を戴き、
新宿中央公園で上演された劇団唐ゼミ☆の「君の罠」を拝見した。

そして今、新宿中央公園に再び青テントが設けられ
1969年に唐十郎氏の紅テント"状況劇場"により上演された
腰巻お仙  振袖火事の巻」が約半世紀を経て上演されている。

テントという日常とは乖離した空間に様々に凝らされた仕掛け、
指呼の間でエネルギッシュに演じられる不条理劇。

1969年と言えば自分などはまだ8歳、
九州の片隅で昭和ど真ん中に生きていた時代。
そんな昭和の空気を色濃く感じながらも
青テントの外は平成の御代という不思議な感覚を覚える。

「君の罠」が演者さんたちの熱演によりなる
たたみかけるような言葉とスピーディーな展開に圧倒されたのに対し
本作では"狂気"が徐々に演者さんたちの間に感染していくような凄みを感じた。

カオスに彩られながらも舞台はヒロインと主人公(?)に収斂していき
クライマックスの大仕掛けとともに幕を閉じる。
その瞬間、語彙の無い自分には「スゲェ…」という言葉しか思い浮かばないが
そこには或る種のカタルシスがある。

そして非日常から現実に強引に引き戻される。

折しも「君の名は。」で描かれた透明感溢れる新宿の描写、
本作で描かれた相反するように思える狂気と闇を孕んだ新宿、
どちらが正しいという訳でもなく、どちらもが新宿の顔なのだろう。
そして新宿だからこそ、この芝居の舞台足り得るのかもしれない。

そして何よりアップデートはされているのだろうが
このような題材、表現が1969年に描かれていたことに驚きを禁じ得ない。

…などと、こんなタイミングでテキストを上げている訳だが
公演は10/12を以て楽となる。

残すところあと1ステージ。
我らが鳳恵弥さんも出演されているのだが
普段の役とは明らかに異なる佇まいは
必ずしもメイクのチカラだけによるものでは無かろう。

今宵、新宿に足を向ける時間があるようなら
中央公園の水の広場の青テントを覗いてみてはいかがだろう。

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2016年6月10日 (金)

劇団クロックガールズ 第13回本公演【コメディカルナイト】

普段そんなにドラマなどを見ている訳ではないのだけれど
医療ドラマと法廷サスペンスは俺的にはかなり視聴頻度が高かったりする。

今回採り上げさせていただくのは医療ドラマの一編
劇団クロックガールズの「コメディカルナイト

"あらすじ"によれば
 「倒産の危機に瀕した個人病院。
 やる気も知識も腕もない3代目院長のもとには、これまた
 やる気のないコメディカルスタッフ(医療従事者)しか残っていなかった。
 そんなポンコツ病院の夜間救急外来で、ある夜、重大事件が発生!」

とのこと。

芝居冒頭に研修医クンが登場してくる。
この研修医クンが軸になって先輩・同僚・患者さんに翻弄されながら
お話は進んでいくんだろうなぁ…などと想像しながら観はじめる。

すると舞台には次々とコメディカルスタッフが現れ、
次々とトラブルに見舞われた外来が訪れる。

少なくない人数の登場人物それぞれ個性が強く
個々にエピソードを背負っている訳で
トラブル含みのお話はどんどん広がっていくのだけれど
テンポよく繰り広げられるドラマは散漫になることも無く
ドラマが進展していく中で様々なトラブルも消化されていく。

張られた伏線が未回収で終わるとそれは観る者にとっては消化不良感が残る。
逆に回収のされ様がきれいに腹落ちするとそれだけでも快感だったりする。
そこで発せられる台詞ひとつが冗長な解説に勝る人物像を紐解いてもくれる。
そうして感じられるキャラクターはみな愛おしい。

様々なトラブルを解消するために関わる人たち、
費やされる労力・時間はその程度により異なるが
それもメリハリが効いていて心地よい。
中でも最大級のトラブルにどうオチを付けてくれるのか…
という期待もそこから生まれてくる。

観る人だれもが身に覚えのある"夜のテンションの昂り"の中での混乱、
最終段階での場面転換は時間の経過だけではなく、
朝を迎え落ち着きを取り戻した心理から
平常を取り戻していく状況に一変させてくれる。

夜中と早朝のコントラストは
置かれた状況に変わりはなくても、様々なトラブルに見舞われても、
そこがそれぞれの人物にとっての唯一の居場所であることを感じさせてくれる。
展開の美しさとでも言うのかな…
ある種の様式美のようなものに触れたような気さえする。

観終わったときに感じた気持ち良さはそんなところにあるのかもしれない。
などというネタばれを何とか回避しようとした素人評論は…
まぁ何の参考にもなりませんが、
実に面白いお芝居ではありましたよ。

詳細は劇団クロックガールズ公式サイトでご覧くださいませ。
日曜まで上演中ですのでご興味のある方は是非。

チケットお申し込みの際には
備考欄にキャスト名「鳳 恵弥」さんということでヨロシク!

劇団クロックガールズ公式サイト

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