趣味

2019年11月18日 (月)

怒涛の作りモノ仕事の合間に思うこと

ここ半年から1年くらい常に作りモノ仕事を抱えて
納期に追われる日々を過ごしている。
模型趣味を生業とした訳でそれは致し方ないところではある。

趣味を仕事としたことでしんどいことは多々ある。
反面、ありがたいことももちろんある。

多くの作品、モデラーさん、製作技術、ツール、マテリアル等々と出会う機会をいただいている。
そこには必ず刺激があり、自分が作る時に反映させたくなる気持ちに限りは無い。

特に業務上製作する際にはモチベーションを維持する上でも
そうして得た刺激を加えルーチンにならないように意識している。

のだけれど、コレがなかなか難しい。
お試しでやってみようとすることは未だ自分の中で消化しきれていないことが多く
完成を見ても馴染んでなかったりするんだよなぁ。
納得度も満足度も及第点には及ばないことは多い。

技法にしてもツールにしてもマテリアルにしても
それを所有することが目的になってる間はまだ消化しきれてないんだと思うし
使いこなすのでいっぱいいっぱいで自分の感覚に馴染む域には到達しきれていないというのが
作品中に馴染んでない、浮いてたりする要因なんだろうね。

食いモノでもそうだけど消化するまでには様々な臓器を経て時間もかかる訳で
得た技法なり製作環境なりはある程度の時間の中で繰り返し用いて
自分の血肉にしていくしかないんだろうなぁ。

とりあえずお試しを実践することで引き出しが増えた気になってしまうのだけど
引き出しを開けてもカラじゃしょうがないから使えるようにしてかんと…とは思う。

手軽に知識なり経験なりを得ることが出来、
限りないセンセイやお教室が隆盛となっている昨今の模型環境だけに
自分の足元は固めときたいかなぁ。

マネから始めよ、とは昔からよく言われたけど
マネから始めて俺のモノに消化しないと
いつまでも納得度、満足度は満たせそうにない。

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2018年1月12日 (金)

好きなことを仕事にすること

好きなことを仕事にすると不幸になる…とはよく聞く話で、
好きな事だけやってて仕事として成立するとは確かに思えず
好きな思いを削ぎ落していったり我慢、妥協せざるを得ない場面は必ずある。
そういう時は好きな事だけに挫折感すら感じることもある。
その点では「好きなことを仕事にすると不幸になる」というのは一理ある。

しかし、好きな事だから諦めずにやり続けることが出来るというのも現実で、
好きな事を諦めてしまうのは、好きなことを裏切ることにもなるし
何より自分の好きという思いを裏切ることになる。
だからどんなにしんどくても頑張れるという側面はある。

1985年にバンダイに入社した自分ではあるが
多くの方はご存知の通り、入社前の大学生時代は模型誌を中心に
商業モデラーとしてそれなりの立ち位置は持っていたと思う。

しかし、入社して研修期間を終え事業部に配属になった時
当時の開発課の課長から入社前のキャリアは貴重なものではあるけど
それはあくまでも消費者という立場でのキャリアであり
メーカーの人間となった以上はこれ迄のキャリアは過去のものとして
これからは新たな気持ちで業務に臨んで欲しいと告げられた。

時代はガンプラブームと呼ばれた時期のピークも過ぎ
1983年に発売されたファミコンが猛威を振るい始めた時期。
入社年に放映されたZガンダムのプラモデル販売は後半から失速、
翌年開発に席を置いた自分はZZガンダムの番組担当として業務にあたることになる。
しかし業績は期待値には及ばず、限りある金型予算との兼合いもあり

登場MS全てを商品することは困難だった。
窮余の一策として事業部長が判断したのは従来金型を使った
アレンジデザインのMSの番組内の登用とその商品化で
ドワッジ、ディザートザク、リゲルグ等のMSが番組内で使われることになった。

この時に事業部長の指示のもと協力を仰いだのが旧知のモデルグラフィックスだった。
しかし、苦心しながらも担当してきたZZガンダムだったが
結局番組終了までに計画を満たすことは出来なかった。
ゲーマルクやクイン・マンサといったMSを商品化できなかったことも痛恨事ではあった。
そして何よりストリームベースの川口がバンダイに入ったんだから
ガンプラもこれまでと違って何か変わるはず…
という期待を抱いてくれていた人たちにも応えることが出来なかったのには
自らの非力を突き付けられた思いだった。

その後全社的な組織変更もあり、自分はホビー事業部を離れ
再びホビーに戻ってくるのは0083の最後期のタイミングで、
その後シルエットフォーミュラを経て
久々のTVシリーズとなるVガンダムの番組担当を受け持つことになる。

自分がホビー事業部から離れている間に0080や逆シャアといった
OVA、映画での新作ガンダムは作られていたが、
自分が戻ってきたころにホビー事業部の売り上げを支えていたのはBB戦士だった。
企画プレゼンテーションや予算組みもリアルガンダムはBB戦士の後塵を拝していた。
当時のホビー事業部担当役員からは
「川口が一番働いたのはバンダイに入る前だなぁ、もっと頑張ってくれよ。」
などと言われたこともある。

その頃だったと思うが事業部の酒宴の後に営業の先輩と話していて
多少の酔いもあったが号泣したことがある。
その時の理由ははっきりしている。入社から7年ほどが過ぎていたが
それまで何等実績と言えるものを出せていない自分がとにかく情けなかった。

そんな思いを抱きつつ担当したVガンダムもプラモデルシリーズは期待値には至らなかった。
ガンダムというコンテンツは当初バンダイではプラモデル商材からスタートし
その後ゲーム、カプセルトイ、カードといった商材に広がり
Vガンダムでは男児玩具部門からの商材も多数出された(SDはとりあえず別枠として)。
ファーストガンダムから14年が経過しており
全社的にも継続していくべきキャラクターとして認識されていたのが幸いしてか
Vガンダム終了後も新TVガンダムを展開することとなり紆余曲折を経てGガンダムに至る。

1994年のGガンダム誕生の過程は以前にも記しているのでそちらを参照いただきたいが
序盤のアゲインストの風を東方先生が吹き返してくれて
結果的には何とか計画に至ることが出来た。
その時にそれまでのTVシリーズを中心に商品ラインを構成するというMDとは
一線を画した商品が必要だという認識が事業部内に生じた。

当時の直属の開発課長と営業課長から
「Gガンが何とか結果を出せたし、 来年はガンプラ15周年だから
川口、お前がやりたい企画をやりたいようにやってみろよ」と言われた。
それがマスターグレードとなる訳だが、開発課長のアドバイスを貰いながら
ホビージャパンでの長期リリースを行い、
合わせて商業モデラー時代の人脈もそこで入社以来の封印を解き
外部スタッフとして協力を仰いだ。

Gガンダム後のガンダムWからは国内販売だけではなく海外展開も本格化し
ガンダム20周年以降海外でのガンプライベントも各国で開催され
自分もイベントに派遣されコンテスト審査や製作デモを行うようになる。

そして今に至る訳だが、
振り返れば好きなことをやりたくて入社して
その後の約10年間は鳴かず飛ばずで挫折感に苛まれる10年。
自分が本当にやりたいことが何時出来るという保証もない時間。
それでも続けてこれたのはとにかく模型が好きだったから。
そして模型が好きだという自分の気持ちを裏切らなかったからだと思う。

カワグチさんは好きなことを仕事に出来てずっと続けて来れたんだから幸せですよね。
そういわれることもある。
確かに今商品開発からは離れたもののイベントで各国を飛び回り
G-Base TYOというロケーションを得るに至ったガンダムというコンテンツに関わっていられる
というのは幸せなことだと思うのだが、それでも直接的にそういわれると苦笑いを禁じ得ない。

それでも模型が大好きだという気持ちが入社から32年間を支えてくれているのは間違いない。
好きなことを仕事にするというのは自分にとっては幸せな事だったんだよ。

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2016年11月10日 (木)

だから俺は"勉強"とか"修行"とかは嫌いなの。

情報の発信というのは難しいもので
発信した情報が100%相手に伝わるということは稀だと思う。
受信者あっての情報の伝達なのだから
受信者次第で一次情報すら曲がって伝わることも少なくない。

まして、Twitterのように文字数に限りのあるメディアなどでは
誤解、曲解による誤伝達が生じやすい。

その辺は判ったうえでSNSツールを使ってはいるのだが
時々真逆の意味に取られることがある。

卑近なところでは、
「プラモテクを身に付けるならガンプラだけじゃなくて、 いろんなプラモを作った方が良い」
と、カワグチ名人は言っていたらしい。

どうやら断片的なログが再構成される過程で真逆な解釈が生じているらしい。

多少本意が曲がるくらいなら仕方がないとも思うのだけれど
さすがに真逆は…ねぇ。

ということで、以下にスキルを上げるに関してのカワグチ的考察など。


「ガンプラだけじゃなくて、スケールも作った方がいいぞ…」
というのはそれこそ昔から折々に耳にする。

そもそもが趣味なのだから、興味があるから買う、
関心があるから作るのであって、
興味・関心のないモノに対価を払い労力を費やすような奇特な人は
俺的にはいないと思っている。

では、「だけじゃなくて…」とおっしゃる方々は皆雑食モデラーなの?
戦車も車も飛行機も艦船も城もロボも作ってるの?
甚だ怪しいと思うのは穿ち過ぎだろうか。

自分などは趣味の世界での"勉強"とか"修行"なんてものは大嫌いだし
しなくてもいい苦労を金を出して買ってくる必要性は全く感じない。
興味のないモノを"勉強"だから作るというような熱意も持ち合わせていない。


好きだから戦車も航空機も艦船も城もロボも作る。
モチーフによって作り方や仕上げ方も異なるから
結果的に知識・経験の引き出しも増えて、
それらが相互作用的にいろんなモノを作る時に役立っているのは否定しない。

じゃぁ、ガンプラしか作らないです…という人は
どうすれば引き出しが増えるのか。

処方箋のような便利なものはないが、自分などが思う一例として
展示会や雑誌、ネット等で様々な作品を目にすることが出来る昨今、
気になる作品があれば、その作品がどうやって作られているのかを考えてみる。
作者さんに聞けば教えてくれるだろうが、そこは敢えて聞かずに考える。

自分がこの作品をトレースするとしたらどうやって作るだろう?
何でこういう風に作ったんだろう?
どんな道具や材料を使うんだろう?
そういった諸々を自分がやるならこういう風にやるだろうとシミュレートしてみる。
出来れば実際にやってみる。
最後に作者さんに聞いて答え合わせすればいい。

自分が想像したものと同じであれば
その作品と同じベクトルの作品を作れるだけの引き出しは持っていることになる。
自分が想像したものと異なっていれば
自分の引き出しに加え新しい引き出しを手にする可能性が開ける。

最初っから聞いてしまってはそれ以上の想像の飛躍は無い。
トレースは出来るかもしれないけどそれ以上ではない。

"素組み"の先にどういう風に一歩踏み出せばいいのか分からないという人は多かろう。
自分がどういうモノを作りたいのか分からないという人もあろう。

だったら最初はいろんな作品を見て「カッケェ!」と思う作品をトレースしてみる。
いろんな作品をトレースして実際に作っていれば当然スキルは上がる。

そういうのは勉強でもないし修行でもない純粋な模型的好奇心だと思う。

<追記>
興味・関心があればやってみりゃいい訳です。
ガルパンきっかけでも艦これきっかけでもTV、映画、きっかけは何でも良いのです。

自分が思い描く作品に仕上がればそれも良し、
上に書いたことは他モチーフに触れる時も同じ気分な訳です。
さすがにゼロスタートということなら素直に調べるなり聞くなりすることを薦めますが。

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