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2019年3月 8日 (金)

「こと~築地寿司物語~完全版」

"運命を受け入れる"というのと"運命に流される"というのは
似て非なるものだと思う。

抗いようがない運命というのもあれば、
自らが選択した結果訪れる運命というのもある。

"運命を受け入れる"というのは正対し自分はどうするのかを考えアクションを伴う訳で
その姿勢は流されるという受け身な姿勢に対し、極めて主体的なのではなかろうか。

それが抗い得ないものでもどう向き合うか考え行動を起こせば
受け入れた後に気持ちを切り替えて歩を踏み出すことが出来る。
踏み出した後は後悔の念や未練のようなものに捕らわれず進むことが出来る。

避け得ない運命には暖かい運命もあれば極めて暴力的な運命もある。
特に後者は考え行動する力を根こそぎ奪っていく。
力を失い立ち尽くし運命を嘆くだけであれば踏み出すべき道も見い出せない。
"運命を受け入れる"ということは最大限の覚悟と責任が伴うことなのだと思う。

そんな覚悟と責任を背負い続けられるほど人間というイキモノは強くはない。
手を差し伸べてくれるのはやはり心を許した仲間なのだろう。
"絆"というのはそうした人たちとの信頼、愛情を伴う関係なのだと思うし、
これもまた受け身の姿勢ではなかなか築けるものではないと思う。

"運命を受け入れ、その後、努力する"というのは
そういう事なんじゃないかなぁ…。


などということを考えながらの2時間余。
「運命を受け入れる~」という言葉は
舞台冒頭に主人公である ことさんから発せられる。

大正時代に日本橋の寿司屋に嫁ぎ
関東大震災で日本橋市場から焼け出され
芝浦~築地への市場の移転に伴い築地で再開した玉寿司。
太平洋戦争が始まりご主人が病没され築地市場も空襲に晒される。
戦後の焼け野原からご主人亡き玉寿司を再建し
代を重ね市場は築地から豊洲へ拠を移す。

女性主人ことさんを軸に語られる築地市場の物語であるが
今回3度目の公演となる。

昨年拝見した2回目の公演では鳳恵弥さんが演じられることさんの強さと
山本圭壱さんが演じられたご主人栄蔵さんの優しさが印象に残る舞台だった。

今回お二人の好演はもちろんなのだが、築地玉寿司の中の人たちと集う人たち、
そして彼ら彼女らが息づく築地という世界がとても愛おしく感じられる舞台だった。

その中で自分的に印象に残ったのが、長台詞をものともせず
ことさんの娘さんの弥生さんの少女時代を演じ切った歌田雛芽さんの存在感と
ことさんの息子さんの幼馴染で奥さんとなる典子さんを演じられたAyanoさんの
優しい笑顔を絶やさない中に垣間見える女性の強さ。
そして今回はことさんの一代記というよりも群像劇に近い印象が
玉寿司に集う人たちを演じられた皆さんから感じられた。

巡り合わせで今の自分がある、という言葉をよく使っているのだけれど
その巡り合わせというのは人であったり出来事であったり様々だが
それも運命というものの一面なのかとも思うし
100%ポジティブとは言えないけれど、
巡り合わせに向き合って考え呑み込むようにはしてきていると思う。

今まで覚悟と責任を重く背負うほどの運命には出会ってはいないが
いざそんな局面に向き合った時に
立ち尽くし、下や後を向き続けるようにはならないようにしたいものだ。

こと~築地寿司物語~完全版
20190307_2

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