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2018年6月 9日 (土)

「くるくると死と嫉妬2018」を観て…

大ヒットシリーズ≪アンフェア≫の原作者であり、
また数々の人気ドラマの脚本も担当する秦建日子が、
臓器移植や無差別殺人など現代に蔓延る問題を取り上げ、
愛とは、正義とは何かを問いかけた話題作が装いも新たに2018年度版として公演。
平成の時代が終わりを告げようとする今、
あなたはこの物語から何を受け取りますか?

演出には神奈川を中心に様々な演劇を発信し、
演出のみならず多くのプロデュース企画も行う笹浦暢大。
総合演出として唐十郎が育てた唯一の演出家、中野敦之が控える。

出演は秦建日子と同じくつかこうへい門下の鳳恵弥が主演を務める。
また、役者としての評価も高い極楽とんぼの山本圭壱や
劇団四季のTOP女優として数々の作品でメインキャストを務めて来た秋夢乃、
宇宙刑事シャリバンなどの主役など日本を代表するアクション俳優、渡洋史などベテラン陣に加え、
映像、舞台と活躍の場を広げる北村優衣や屋久島アイドルのかずみーぬなど若手の注目株も出演する。
<以上、作品紹介より>


自分は作劇のお作法もセオリーも知らないので
散漫にはなるが感じたままにこの作品に触れてみる。

開演時間となり暗転した舞台に鳴り響く重々しい音楽。
後に様々な事件・事故に巻き込まれる、
或いは当事者となる演者さんが舞台に並びお芝居は始まる。

植物状態、脳死、臓器移植を要する重症患者たちが並ぶ病院で近親者たちは
或る者は絶望し、或る者はパニックに陥り、また或る者は冷静に受け止めようとする。
重症患者たちは理不尽な無差別殺人事件の加害者であり被害者としてそれぞれのドラマが語られる。

それと並行して余命を宣告された女性と彼女を愛する男性の話が加わってくる。

既に時系列は自分の中で混乱し、ストーリーを追いかけるよりも
エピソードの断片からそこに関わる人々が抱いているものに目を向けることに意識が変わっていた。

現実の世界でも連日様々な事件・事故が報じられる。
その報を知った者は自分の世界には起こり得ないこととして
観劇しているような立ち位置で受け止める。

事件が醜悪であればあるほど、衝撃的であればあるほど
ニュースメディアは加害者の異常性を追い
怪物性を際立たせられた加害者は平穏な生活を営んでいるものの目には
自分たちとは別種のモノのように写っていく。

だが、生まれついての怪物という存在は果たしてあるのだろうか。
誰しもが心の奥底に闇を孕んでいるはずで
それが表出した結果が異常な事件の加害者の姿なのではなかろうか
その点では誰しもが怪物に変ずる可能性を持っているように思う。

疑心は暗みに鬼の姿を見せ、更に疑心が募っていくと悪鬼を生じさせる。
悪鬼に駆られた人は心の闇に支配され、
時として誰もが想像し得ない暴挙に走らすこともある。
誰もが意図せず怪物と化す可能性を秘めているのではないかと思う。

理不尽な凶行に晒された劇中の人物は絶望から狂気に蝕まれていく。
そうした狂気は伝染するかのように社会に広がっていく。

その反面、劇中では余命を宣告され絶望を感じたであろう女性が
理不尽で抗えないモノを受け入れ前向きな意識に転化させた姿がある。
絶望を超えた彼女の姿は愛おしく、強さすら感じる。

滅私奉公的な意識を必ずしも無条件で良しとは思わないが
エゴが溢れる昨今、閉塞感に似たフラストレーションを感じることも多いが
そんな世の中を少しでも住み易く感じるためには
絶望を受け止め超えていく姿勢を保つことなのかもしれない。

人間、一番大切なものは自分であり
大切に思い愛し守りたい範囲は自分を中心に近親者、友人・知人、他人へと
自分から距離が離れるほどに次第に希薄となっていく。
人の数だけ思いの同心円はある訳で
それが交錯する時、共感も生まれることもあれば軋轢を生じることもある。
軋轢よりも共感が生まれる割合が多ければ
きっとその社会は住み易く感じられるのではないかと思う。

劇中で「遠くの者を愛する」という言葉が用いられる。
自分なりの解釈になるが
希薄になりがちな他人への思いを意識することで作品紹介で問われた
「愛と正義」を認識し保てるのではないか。
劇中の様々な人物が辿り着いた場所はそんな境地なんじゃないか。

そんなことを感じさせてくれた2時間ではあった。

くるくると死と嫉妬

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